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執筆者の写真dousuru3

多方面への影響を勘案する


経産省による意見交換会


経産省が2020年4月6日から「関係者の御意見を伺う会」をスタートした。


各回のゲスト

第1回・第2回:福島県の関係組織

第3回・第4回:全国の関係組織

第5回:再び福島県の関係組織と初の住民

第6回:商工会議所と東北・関東の3県

第7回:福島県と全国の漁業水産業団体のトップ


以下、第1回から順番に動画視聴メモを残す。


第1回

2020/04/06

動画視聴メモ


国と東電に風評対策と情報発信を求めた福島県知事に続き、各団体が意見を表明。

旅館・ホテル

・実際に放射性物質が拡散する

・断じて「風評」被害ではない ・海洋放出を容認するが保障を十分に 商工会議所 ・科学的な説明だけでは解決しない ・処理水の実態について十分な説明を ・将来にわたる保障を表明してほしい 森林組合 ・シイタケ原木や山菜など出荷制限が継続中

・新たな放射性物質放出には反対 ・所有者の森林への関心減退も被害の一つ

※ここで初めて国サイド(福島会場)から質問「反対は大気放出について?」→回答「住民の7割が未帰還で現場では働く人がいない。なにより人が帰ってこられる体制を整えてほしい。こんな状況で先に放出することには大気でも海洋でも反対」 県漁連 ・あくまで「地元で」生業を再建しようとしてきた

・海洋放出には反対せざるを得ない

・国の廃炉に向けた汚染水対策を苦渋の選択で容認してきた

・生鮮なので魚介類の全量検査は無理、抽出検査のみ

・今も漁獲量は震災前の14%にとどまっている

・これから増産に向けて舵を切るところだ

・震災9年で世代交代が進んだ

・彼らに将来を約束していくためにも海洋放出に反対する

・海洋に県境なし。意図的にトリチウムを放出するなら、

 全漁業者の意見を聞いていただきたい。 市町村会 ・廃炉と復興は車の両輪 ・トリチウムの性質や処理方法の安全性など周知を ・スケジュール有りき福島県有りきでなく安全なら県外放出検討も

・処分すれば農林水産観光業に風評被害発生は必至

・あらゆる業界に実効性ある風評被害対策を具体的に示してほしい

(動画2時間50分あたりから首長の意見陳述)

相馬市長 相馬市は沿岸漁業の拠点。だが物理的に(タンク敷地に)限りがあるので対策は必要。エビデンスに基づく適切な処理を。風評被害が懸念される漁業・観光業の了解と合意を得て。 南相馬市長 風評被害対策の具体策を示し、安全性についても理解が得られる説明を。そのためには時間を要する。タンク増設も含め期限ありきではない議論を。 新地町長 核種はトリチウムだけ。絶対守っていただきたい。告示濃度未満(最低でもWHOの飲料水水質ガイドライン濃度以下)にするまで増設も考慮しタンク保管を。透明性を確保することが重要。トリチウム除去の研究努力も最後まで。地元漁業振興策も示し国が全責任を。 飯館村長 時間的余裕があるのか、ないのか。結論を急ぐのなら、少なくとも安全性の確保と賠償、生活の保障を。頭を下げてやるのが大切では。長く議論する余裕があるのなら、それもいい。 ★筆者の感想:あくまで「伺う会」なので対話はゼロで聞くのみ。今回の中継で国(福島・東京会場)からの挙手は森林組合に対する1回のみ。東京会場に至っては終始無言。全く発言しないなら、このコロナのパンデミック中に無理に会場に集まらないほうが……(人の入れ替えやマイク消毒、繰り返しの説明などあり通常以上に非効率)。また福島県の各主体から「国が周知・説明を」と何度か発言があったが、政府からの一方的な説明は国民の信用を得にくい情勢であるため、全国の専門家や市民が参加して、多方面から発信したほうが議論が深まり周知も早まると思う。




第2回

2020/04/13 第2回「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場」 動画視聴メモ 第一部、第二部を通して、福島の代表者たちは「国が前面に立って風評被害防止の具体策を示すべし」と訴えておられた。放出するなら経済的被害を生じさせない万全の体制を整えてから、というのが共通意見だった。新型コロナウイルス対策について経済活動制限とセットの経済支援を求める声と同じく当然の訴えだと感じた。以下、各団体代表意見の抜粋。 第一部 招かれた団体企業代表3名による意見表明。

コロナ対策のため入れ替え制で、一人ずつ無人面接のように画面に向かって陳述。 福島県商工会連合会 ・依然として元県民4万人以上が避難生活中。地元で商売がしたいが環境が整わない。 ・処理水のタンク大量いずれは処分しなくてはならない。問題は(時期が)早いか遅いか。 ・東電任せではなく、最後はすべての責任を国が負うべき。 ・風評被害は9年間経験した。「なんぼ説明しても」理解を得るのは難しい。 ・私個人(会長)は一日も早く汚染水を処理して風評をなくしてほしい。

(筆者メモ:会長は立ち並ぶタンクこそ風評被害を生むと考えておられるようだ。) ヨークベニマル ・5県で231店舗(県内78店舗)のスーパーマーケットを経営。 ・福島県産品の放射性物質を測定しつつ販売してきたが今なお風評被害あり。 ・県産魚:カツオ、サンマ、沿岸のヒラメ、カレイ(常磐もの)の販売は、安全安心の担保と風評の払拭が唯一かつ最大の条件。 第三者機関が安全性の科学的な根拠を広く提供し、県内、国内、グローバルレベルのコンセンサスにしていただきたい。 ・目に見えないものへの不安と恐怖を払拭するためには、サプライチェーン全体がワンチームになって全国に十分理解していただく必要あり。チームの足並みがそろわないまま放出がスタートしてしまうと、払拭に非常に長い時間がかかる。 ※ここで本日最初で最後の国側(経産省)からの質問 Q:現場で感じる風評被害の実態は? A:福島県の良い産品も、十分に輸出できない、相応の価格で流通できない。 福島県農業協同組合中央会 ・米の全袋検査など風評被害払拭に努め、ようやく10年目にして見通しが。この最中に放出を検討するのは遺憾。 ・最も懸念するのは安全性の担保と新たな風評被害の発生防止対策。 ・海洋か大気かの二者択一には反対。今後おおむね10年の時間軸を持ちトリチウム分離研究など技術開発を。エリア内での保管と半減期を見据えた状況把握を。 ・福島県もしくは福島沖に封じ込めようという意図を感じざるを得ない。 ・リスクコミュニケーションの内容頻度の充実を。

・関係省庁の発信の閲覧者は限られる。マスメディアやSNSでさらに情報発信を。

・福島県産品の販売促進イベントの継続を(PR活動が広告代理店や大手通販会社に丸投げの単発キャンペーンではなく)。 ・原子力教育の充実。あらゆる機会を捉え放射能に関する正しい知識を。

第二部 いわき市長に続き、双葉郡の双葉町長、富岡町長、広野町長、葛尾村長、楢葉町長 、川内村長、大熊町長、浪江町長が意見表明。以下、抜粋。 いわき市長 ・科学的に安全であることが大前提。事故前から各地でトリチウムは放出されている。その周囲で被爆に伴う異常が発生していないことの確認と周知を。公聴会では小児白血病やダウン症などの増加の報告あり。一般の人は専門家の意見が割れていると不安だ。透明性を確保しつつ真っ向から議論して国民全体で共通認識を。 ・生物多様性にも影響を与えないよう、十分なモニタリングを継続し適切な保全措置を。 ・市民の皆様が歯を食いしばって頑張っている。東京電力の賠償実績は3割ほどに過ぎず賠償すれば良いという問題でもない。国が前面に立ち風評被害を発生させない対策を。 ・放出開始に2年かかり、2022年夏に敷地が満杯になると聞く。逆算すると今年夏までに決定となるが、いずれの調査でも海洋放出反対が賛成を上回っている。一般住民や国内外からも意見を聞いて理解を得るよう丁寧に慎重に。今後30年は影響が出かねない。拙速に結論を出すことなく、あらゆる可能性の検討を。信頼関係を裏切ることのないように。 ・(検討中に)タンク保管が限界に達することがないよう、今のうちに対策を取るべき。 双葉町長 ・炉心溶融を起こした福一の汚染水の安全性は、一方的に示しても不安解消にはならない。

・廃炉計画には、より困難な作業もある。

・実際に一番被害を受けるのは双葉地方の住民である。 富岡町長 ・タンクの場所が2022年夏に満杯とはいえ説明が尽くされたとは考えていない。

・タンク内は7割以上が放出できない濃度と聞く。時間が必要。

・タンク貯蔵を続けるにしても放出するにしても、風評を絶対に発生させない万全の対策を打ち出していただきたい。 広野町長 ・地元へのさらなる丁寧な説明を。科学的かつ社会学的な観点から最善の選択を。 葛尾(かつらお)村長 ・水蒸気放出は拡散が広範囲で事前予測も難しく農畜産業の村に影響大。

・この9年の復興を後退させることは絶対にあってはならない。 楢葉町長 ・各分野の専門家による検討に時間をかけすぎた。期限や結論ありきに聞こえ、不信感や反発を招きやすい。

国や東電の説明は住民には非常にわかりにくい。世間的には放射性物質が放出されるという事象しか伝わっていない。科学的根拠を示すのも大事だが、生活する上でどのような影響があるのか、具体的に自分ごととしてイメージを持てるような情報発信を真摯に追求し、周知に努めてほしい。幅広い理解を得るためには透明性の確保も大切。 ・放出中・放出後のモニタリングを。安全に適切に実施されていることが誰でも確認できるように。第三者機関によって随時監視し、異常があった場合は即停止すること。 ・さまざまな意見があるのは当然。国が先頭に立ち、徹底的に風評被害が生じない対策を。 川内村長 ・どの処理方法でも社会的な影響が大きい。保障と対策の全体像を具体的に。 ・さまざまな関係者の意見を聞いて慎重に検討し、プロセスも住民に示してほしい。 国民の関心事が新型コロナ対策である今、どこまで国民的な議論に発展していくのか。 大熊町長 ・タンク設置スピードより処理水発生スピードのほうが速い。早晩、タンクや敷地が満杯になるが、そう簡単には経済的社会的影響は解消されない。

・問題は風評被害。生じさせないという決意のもと、それでも生じる被害にどう対処するのか。これ以上、生業をおかされては故郷に暮らし続けることは難しい。処理水による風評被害を上乗せする前に、経験や教訓を活かすことはできないものか。 浪江町長 ・まだ6%の帰還。全力で復興に取り組み、ようやくまいた種の芽が出てきた時。 ・どのような方法であっても、つきまとうのが風評被害。いくら安全性が科学的に実証されていても安心は得られるものではない。放出次第では移住定住促進の妨げに。風評被害を感じなくなるまで息の長い対策を。

★筆者の感想:東京と福島の遠隔テレビ会議とのことだったが、画質や音質が非常に悪く、まるで宇宙との通話のような謎の時間差も発生。全員マスク越しでもあり、非常に聞き取りにくい。後半の双葉市町村の首長の意見陳述の際には、会場がかなりの「三密」状態に。新型コロナの犠牲者に中年以降の男性が多いというのに、まさにその年代の責任ある立場の男性ばかりが国の要請で集まりマイクを使い回している図は、かなり異様だった。また、第一部の最後に県農協から「福島県にもおいしい水はある。こういう会では福島の水を使っていただきたい」と指摘されたためか、第二部では机上のペットボトル水からラベルが消えていた……(もしや急きょラベルをはがして誤魔化した? そういうの良くないです)。なお、今回は東京側が三密を避けるため数カ所に分散したせいか、最初の福島県商工会連合会会長の発言が東京に聞こえておらず、数分経ってから途中で遮り「もう一度、最初からお願いします」という非常に失礼な展開に。第一回に続き、今回も国からの質問は1問のみで、やはり、このコロナ禍の最中に双方に無理を強いてまで対面込みで実施すべき会合とは思えなかった(福島県のリーダーたちは日本の復興に欠かせない重要な方々です。万が一この福島会場がクラスター発生源となったら、誰が責任を取るのでしょう? )。




第3回


経団連 ・政府が最後まで責任を持って根気よく取り組むことが不可欠。 処分方法は、IAEAにも評価されている専門委員会とりまとめを活用し判断を。 処分のあり方の決定から実施までの時間を活用して、国内外に安全性の根拠となるデータなど正確な情報を発信し、適時適切なリスクコミュニケーションを。 風評被害対策として購買を積極的に働きかける。例えば、ふるさと納税制度の活用 東北産業の復興は人の不足もあり道半ば。官民が引き続き支援を。 廃炉現場の視察を中心とした研修実施など、今後も風評被害対策をしていく。 Q:ふるさと納税の活用とは? A:販路拡大には何らかのメリット提供が要る。その一手段として、特定の地域において(ふるさと納税の)率の緩和などを政策論としてやってもよろしいのでは。 日本旅行業協会 報道に伴う風評被害を懸念→迅速で正確な情報発信を国内外へ。 処理の開始時期発表と同時に、安全安心に福島県を旅行できる環境整備を。 観光振興によって風評被害を最小限に抑えたい。

 国へのお願い

  1. 福島県への旅行需要の喚起(官民によるキャンペーン、地域振興券など)

  2. 基盤整備(交通アクセス、多言語、キャッシュレス、ビッグデータ活用、回遊ルートやインフラ整備など)

  3. 情報提供(旅行の形態ごとに必要な情報を一元的に提供できる部署の設置、観光需要を作る方々を招致する企業研修や教育旅行を実施など)

  4. 食の風評被害対策。汚染水処理決定後の風評被害防止は観光にとって最重要課題である。福島県はどこよりも農作物の検査体制が充実。福島県産米は全量検査。海洋放出された場合の魚の安全性は、県、国、東京電力、マスコミ、政府観光局も含め正確な情報を国内外に発信し啓発活動を。

福島県は非常に魅力ある地域(雄大な自然、バラエティーに富んだ宿泊施設、豊富な温泉、モモ・リンゴ等の果物、各種の賞を受賞している日本酒、地域の伝統文化も豊富。防災の学習環境や再生可能エネルギーの関連施設も充実。教育旅行や福島県のホープツーリズムなど、ユニークな体験を提供できる)。その魅力を一人でも多くの皆様に知っていただくために努力することを約束する。 Q:全国の旅行業界の皆様にどうしたら正確な情報を届けることができるのか。 A:旅行関係者を福島へ。現地の食を体験してもらうことが一番。食に関する会議を福島県でやっていただいてもいいのでは? Q:地域振興券とは具体的に? A:訪問客を旅館に抱え込まず地域を回遊していただく観光が大事になってきている。現地のプログラムや食材を簡単に入手できるような呼び水として地域振興券を販売できれば。 全国旅行業界 大量のタンクが並ぶ映像は事故の象徴。観光面で少なからずマイナス。破損事故も懸念。

十分に安全性を確保した上で必要な処理をすべき時期では。 2つの方法が示されたのは前進。空中放出は、風向きによる拡散や隣県への影響、高い排気塔によって長期間にわたり風評被害が継続する懸念あり。海洋放出は、徹底的に安全性を確保した上で、放出後の沿岸環境や海洋生物への影響の調査分析も徹底的に。 放出後の風法被害に備え、安全性と必要性について理解を得るように対策を。 どうしてもやむを得ない処理方法であると十分に普及を。 Q:風評被害対策として政府にやってほしいことは。 A:分かりやすい資料提供を。

日本スーパーマーケット協会 被災地の産物の販売が東日本大震災前に戻っていないのに。新たな取り組みに懸念あり。

 対応にあたり2点のお願い

  1. 安全:安全であると国から国民に丁寧に、専門用語や横文字をなるべく使わずに分かりやすい言葉で説明を。海外の専門機関からも伝えてほしい。

  2. 風評被害:お客様に安全だと認知していただくことが必要。マスコミ報道、SNSなどを使って、危険でない、安全である、ということを伝えていただきたい。

Q:こういう取り組みをもう少し強力に、というのがあれば。 A:マスコミへの情報の出し方。いかに広く国民の皆様に情報を届けていくかが重要。 日本チェーンストア業界 全国の顧客との橋渡し役として、国民の安心を得ることを何よりも重視。9年経っても復興はなお途上。新たな10年を生んではいけない。安全対策と同時に安心対策が必須。安心を得られるまでは放出処分を行わないという覚悟が必要だろう。 ・安全の確保は当然。その上で安心を。しかし安心は、国民一人一人の主観、心理であり、永遠の課題。説明する側が我々と同じ視点であると聞く側が感じられるか、信頼を得られるか。放出しないで保管し続けてほしいというのが多くの人の偽らざる心情だろう  必要なこと3つ

  1. 正しい情報の分かりやすい開示が重要。嘘や隠ぺいは信頼を失墜させる。デマの類も尽きない。

  2. 結論を押し付けることを避け、丁寧な議論が必要。多くの方は政府・東電・専門家が長い時間をかけて議論されてきたことを知らない。経験の共有もない。当然、情報のギャップがある。そのことに発信側が思いを致さないと、聞いている側は結論ありきの押し付けと感じ、不信感につながる。保管/海洋放出/陸上放出のうち、保管のメリットは「リスク回避」なので分かりやすいが、どの選択肢にもメリットとデメリットがある。その比較判断を一緒に考える「課題共有のプロセス」も必要では

  3. 店頭の福島産品の安全性が全国で共有されること。処理水を処分するなら、きちんと安全性を確保する仕組みが構築されていることを、改めて伝えるべき。

Q:正しい情報を伝える取り組みを進めていくために政府がすべきことは。 A:政策供給側の視点に立って正確性を保とうとすると、聞いているほうは何を言っているか分からない。聞き手側にはいろいろな理解度の方がいることを踏まえ、供給側でなく聞き手側の立場に立った情報提供を心がけていただきたい ★筆者の感想:各団体のこれまでの取り組みのPR大会のようなくだりもあった。経団連などは、場所も方法も現段階では未定であるのに、すでに被災地での海洋放出が前提となっているような話し方だった。決め付けの危うさを指摘した最後のチェーンストア業界の話は、立ち位置を間違えていない市民サイドの内容で好印象だった。第3回は、各団体の代表が会場に呼び立てられずコロナ対策として現場からの中継だったので、第2回までより安心して見られた。国側からの質問も増え、遠隔ながら質疑応答が成り立っていた。それにしても中断や音声の途切れなどネット環境がひどい。国主催の会議でこのレベルというのは残念。ライブのモタモタ感は仕方ないとしても、公開動画がこの状態では、最後まで見る人は少ないのではないか。国民に広く発信したい気持ちが本物であるならば、せめて公開する際は、繰り返しの説明部分や中断の空白をカットして、短時間の見やすい動画にまとめて公開してほしかった(マンパワーが足りていない様子)。そもそもの原因は、このYouTube動画への反響がほぼ皆無という国民の関心の薄さにあるのかもしれない。


人は、不安な時に何かを判断すると、良いことしか想像しない。有事に制度などを検討すると、悪い点が挙がりにくい。フラットな時にゆっくりと議論したほうがいい。

心理学者・植木理恵

(2020.5.13放送 フジテレビ「ホンマでっか!?」より)


全く処理水とは関係なく発言された心理学上の説だが、これを踏まえれば、感染症パンデミック中に汚染水の処理方法についての決断を急ぐのは危うい。とはいえ、地球温暖化の進行に加えて地震活動まで活発化している激動の日本列島でフラットな時を待っていたら、いつになるか分からない。それに「良いことしか想像しない」傾向にあるはずの有事(コロナ禍まっただなか)に開催されたにもかかわらず、経産省の「御意見を伺う会」では各主体の代表から慎重な意見が相次いだ。観光業など地域産業が大きな経済的ダメージを受けており、風評被害の継続や再燃に敏感になるのは当然かと思う。というわけで、この件については、有事だから悪い点が挙がりにくいとは思わないが、第3回あたりまでは「今ではない」印象がぬぐえなかった。




第4回

2020/06/30

動画視聴メモ



全国商工会連合会

  • 加盟会員は全国80万。

  • 風評被害はゼロにはならない。現時点でも風評被害に苦しんでいる中小規模事業者がさらに苦境に。現状を維持できるのであれば維持してほしい。

  • しかし処理が必要なのであれば、政府と東京電力の責任で国内外に十分な説明をした上で第三者機関による監視管理体制のもとで実施すべきではないか。

  • 国民の理解は十分ではない。目に見えず影響が長期にわたるため説明を尽くしても全く理解を示さない方もいるため、できるだけ多くの方のご理解を得た上で進めていくのが肝要。これまで以上に広報を。その際は国外にも。

Q(国サイドからの質問。以下同様):どのように広報すれば。

A:2011年の物産展では福島県産品が受け入れられず翌年は受け入れられた事例から、風評被害払拭には相当な時間をかける必要がある。


Q:第三者機関とは。

A:構成メンバーなどの具体的なイメージはないが、きちんとプロセスを担保していただけるようなものを。



日本ボランタリーチェーン協会

  • 加盟会員は全国4万店。

  • 安全であれば流せばいいのではないかというのが率直な考え。

  • 当事者には説得力がないので国際機関(の見解)や海外の原発処理の事例などを分かりやすく国民に説明し納得いただくのが一番。

  • マスコミの影響が大きい。正しい情報を流してほしい。消費者が買ってくれない商品を置くことは加盟店にとっては死活問題。

  • 安全ばかりの発信だと余計に懐疑心を持たれてしまうため、マイナス部分もしっかり示してほしい。

質疑応答なし



全国消費者団体連絡会


加盟会員は地域25団体と全国15団体の消費者組織および非営利組織8団体。そのため意見は一致していないが、以下が理事会で確認した5点。


  1. 国民に知られていない。再浄化して、さらに薄めて流す方針が国民に理解されていない。事故原発由来の汚染水であることを懸念する意見もあり、そこにも説明を。関心がない人にも伝わる方法が必要。国や東京電力を信用できない国民もおり、信用を得ることも必要。

  2. 大型タンク貯留やモルタル固化処理について再検討を。コストを判断基準にしてはいけないと思う。保管し続けない東京電力は事故の責任を果たしたことにならないという意見も。

  3. 地元住民の声をしっかり受けて止めてほしい。今回の会をもって「消費者の声を聞いた」ということにはしないでいただきたい。原子力市民委員会やFoEジャパンなど市民サイドのの意見をもっと幅広く聞くべき。「元に戻してほしい」という共通の願いに対して、戻せない部分は国や東京電力の責任で保障を。

  4. 風評被害は消費者だけではなく、消費者が買わないだろうと考える仲卸や流通業者の問題でもある。流通促進イベントも引き続き実施を。国民の理解がない中で実施すれば必ず風評被害が生じる。風評被害かどうかが東京電力が定めたルールに沿って判断されているが、しっかりと損害賠償を負うべき。

  5. 国と東京電力の責任のとり方として保障に加えて国のエネルギー政策において地震国の日本で原子力発電をやめて再生可能エネルギーを中心とするのも一つ。処分方法の再検討を含め、国は、リスクコミュニケーションについて国民が考える場づくりを。多くの国民に知ってもらうまでは処理水の取り扱いの方向を決めるべきではない。


Q:モルタル固化についても検討はなされているが一般の方々に伝わっていない。

  関心がない方にどのように広報すれば良いか悩んでいる。アドバイスを。

A:世の中で大きく話題になることが大事。マスメディアやインフルエンサーによる発信など、皆さんの関心を引くことが一番ではないか。



★筆者の感想:今回最後に発言した全国消費者団体連絡会の代表が、この一連の「御意見を伺う会」の発言者で初の女性だった。日本の多くの団体の代表が男性である表れだが、女性が日常的な消費行動に大きな影響力を持っていることや、処理水についての懸念で最も頻繁に聞かれるのが消費が密接に関係する「風評被害」であることを踏まえれば、これまでの議論の場における男女比の異常な偏りこそ、解決を遠ざけている一因のようにも思えた。




第5回


今回は東京から3省庁が福島県の会場へ(他省庁はオンライン参加)


福島県議会

風評対策は今でも根強く残る。情報公開が大切。


◇県内産業の状況

【農業】平成30年は震災前の9割まで回復。しかし市場価格が下落したままの作物も。原発被災地区の営農再開率も3割程度に留まる。20の国と地域で県内農林水産物の輸入規制が続いている。

【漁業】試験操業が拡大し39都道府県に常磐物が流通。しかし県全体の水揚げ量は震災前の6割、沿岸漁業に至っては震災前の14%に留まる。

【観光業】平成30年は震災前の98.5%に回復。子どもたちを迎える教育旅行は震災前の7割程度の人数に留まる。全国的な新型コロナの影響が、福島県では、より深刻。


◇アルプス処理水の取り扱いについて

当議会は2018年から毎年、3度にわたり意見書を提出し、幅広い関係者からの丁寧な意見聴取と風評対策の充実強化を求めた。6月定例会の審議では、拙速に結論を出すのではなく、しっかりと国民の理解を得るべき、国内外に正確で客観的かつ科学的な情報を発信すべき、という意見が出た。


◇県内自治体の動き

2020年3月以降、県内の内陸を含めた21の市町村議会で、海洋放出への反対や慎重な対応を求める意見書等が決議された。県漁協も6月に全会一致で海洋放出反対の特別決議を採択。このような状況からすると、県民の理解が十分に得られているとは言えない。


◇県議会としての意見

1.風評対策の徹底を

2.幅広い関係者から意見を聞き慎重に決定を

3.方針決定に至るプロセスの公開と丁寧な説明を


※国側からの質問

Q:風評対策について「これまでの県民の努力を把握しなさい」と捉えたらよいのか?

現場で感じる風評被害の実態は?

A:努力してもなお風評被害はある。大きな課題。これからまた助長されるのではないか、という意見がある。さらに助長しないための対策を求めたい。



福島県青果市場連合会

県内10社が加盟(1社は原発事故以降休業中)。


◇青果の現状

いまだに出荷制限等あり。特に山菜類や野生きのこが痛手を被っている。


◇困っていること

関係者が一丸となって風評払拭や流通促進をしているが、一部まだ理解されていない。特に児童や保護者等の安心確保のため、学校給食の食材等の放射性物質の測定をして安全確保を図っているが風評被害は依然として払拭されず。事故発生前の販売状況に回復していない。


◇アルプス処理水の取り扱いについて

トリチウムは健康への影響がなくセシウムと同じではないと理解したが、出荷制限や風評被害がなくならない限り影響は同じであり憂慮している。

連合会としても努力していくが、政府も第三者的組織をつくって、さらなる風評被害払拭に努めていただきたい。


Q:第三者的な立場とは具体的には?

A:我々当事者が安全だと申し上げても、特に児童保護者には理解されない。東京電力や政府の立場ではない方の組織を作って発信していただければありがたい。



福島県水産市場連合会

県内9社が加盟。


風評被害ではなく実質被害が続いている。県民もまだまだ苦難の道を歩んでおり、若い県民が戻ってきていない。


◇水産物の状況

試験操業の枠内で震災以前の数量の約14%程度しか水揚げがない。そのために県内の卸売業者は他県に頼らざるを得ない。

福島県の海は日本で2番目に長い浜を持ち、親潮と黒潮がちょうど交流する一番の漁場と自負しているが、いまだ本格操業に至っていない。


◇アルプス処理水の取り扱いについて

科学的に学者が安全性を出していて頭の中ではある程度は理解できるが、海に流れた時に一般の方がどういう反応を示すか。特に福島県民がどこまで理解しているのか。親切に丁寧に報道していただければありがたい。

タンクがいっぱい。しかしながら現時点でそれを海洋に放出することが本当に適切なのかどうか。より慎重に意見を聞いた上で決定を。原発は国策事業。しっかりと国として判断を。

県民全員が目の前の海の魚を喜んで食べられる日を待ち望んでいる。そうならないと何の意味もない。(卸売業者は)毎日、他県に電話して県内市場に引っ張ってきている。この苦しい悔しい作業をせざるを得ない。一日も早く福島の海が以前のように戻っていただきたい。


Q:理解が進んでいないというご認識だが、理解が進めば放出をしても良いということ?

A:一番被害を被ったのが福島県民。アルプス水を福島県ありきで海洋に流すのが県民にどういう反応を起こすのか。数字の安全と心の尺度の安心は違う。お年寄りと若い人でも違う。科学的には良いと言われても難しい。そこを超えないと処理水の問題は解決しないと思う。県民だけの問題ではないかも。より丁寧な説明を。


Q:風評ではなく実質的な被害。その通りだと心からお詫びを申し上げたい。正しい理解を国民にしてもらう効果的な方法について具体的には?

A:卸売業者は1日で全国から食を集める。スピーディーに毎日、公平、公正、公開(をモットーに)やっている。卸売業をこれからも維持していくためには、いち早い海の回復が望まれる。※直接的な回答はなし



福島県民(4名)

「福島県原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」構成員

※以下、意見の抜粋


秋田氏

トリチウムについては、長い期間の議論があると思う。福島県だけでなく全国的な問題として国の根拠を丁寧に説明され合意のもとに安全に進めていくこと、さらなる風評被害が発生しないようにすること、被害が出たら国が補償を含め安全の確保を断言することが大事。この難問題を早期に解決してこそ完全復興に前進することができる。


猪狩氏

事前にいただいた資料に「トリチウムは自然界に存在している、国内外から放出されているが健康への影響は確認されていない」とあるが、国民には正確な情報が伝わっていないし理解もされていない。まず正確な情報発信が重要。トリチウムについて若い年代に知ってもらい議論してもらうことが大切だ。次に、風評対策がしっかり行われるかどうかが不安。処理水の処分以前の問題だ。作業員の方の安全が第一。ゆっくりと慎重に進めていただきたい。


井戸川氏

新聞に「相次ぐ反対表明」とある。地元は警戒感を持っている。昨日の新聞で読んだ「安全ならば流せばいいんじゃないか」という意見には、むっと来た。この10年の苦しい思いを到底もみ消すことはできない。

また、こういう会合や説明会には年配が集まっている。若者を交えれば思わぬ案が出てくるのでは。トリチウムの説明資料は上から目線でついていけない。もっと掘り下げた泥臭い説明を。個人的には、トリチウムを取り除かない限りは海洋放出は難しい、水蒸気放出実験は無理、と思っている。大熊町からタンクがなくなることを願っている。※矛盾?


菅野氏

定期的に現場を見学し資源エネルギー庁から説明も受けているが、海洋放出には反対したい。県民で賛成する方はほとんどいないだろう。トリチウム分離の技術ができるまで保管していただきたい。

  1. 海洋放出以外の方法について、どのような検討がされたのか周知が不十分。トリチウム分離技術の研究をどの程度やってきたのかも聴きたい。分離は難しい、人体に影響はない、だけでは納得できない。廃炉も処理水も数十年スパンで。日本の技術で世界に誇れる開発を。

  2. 敷地が有限であることは分かっていたこと。それ以外の敷地の検討をしたのか見えない。交渉した経過があるのか教えていただきたい。お役所の縦割りの感じがぬぐい切れない。

  3. 風評被害と現在も闘っている。廃炉が終わった後も何十年と続くのだろう。風評の根源は人々の無知だが、個人差があり全て解決するのは困難。我々の言葉で具体的な説明を。そうでないと不安が出てくる。不信につながる。今の段階で放出されたら福島県民の10年の努力が水泡に帰す。私たちは9年前に突然、避難指示を受けた。細かい説明はほとんどなかった。国に対する不信はまだ持っている。住民感情に沿った取り組み、不安と不信の払拭を。


最後に国からのコメント。地元住民の方々からの質問(井戸川氏がコメントした「県内・県外での処理水の説明会は何回やって何人が集まった?」「トリチウム有り無しの水槽で魚を飼育した科学的分析の事例はあるのか?」など)には後日回答するとのこと。



★筆者の感想:今回の音声は聞き取りやすかった(YouTubeではなくなった)。

地元の今日まで続くご苦労を知った。津波被害のみであれば、ここまで広範囲かつ永続的な影響はなかったはず。約10年経ってなお営農再開率3割という数字に、改めて原発事故被害のむごさを感じた。


第6回

2020/09/09

動画視聴メモ


東京会場で開催。一部はオンライン参加。



日本商工会議所


福島県では今なお4万人もの住民が避難生活を強いられている。

福島県の再生・復興を果たすためには原発事故の解決(収束・廃炉)が不可欠。


現地の商工会議所は風評被害の再拡大を心配している。特に漁業は出荷量も魚価も元の水準に戻っておらず、かつて皇室御用達だった高級魚ヒラメの価格も3−4割低いまま。水産業者から「海洋放出されたら本当に困る。我々を殺す気か」と言われたと聞く。

商工会議所からも直接、中国などの政権トップに規制撤廃を訴えているが、原発事故以来、中国・韓国・台湾など主要な海外市場を失っている。

風評被害の上乗せは必至。一次産業を中心とする福島経済に重大な打撃を与えかねない。


国際的な第三者機関による客観的な安全性の証明および国民への周知を。それでも風評拡大を防げなかった場合の被害に備え、具体的な支援策の創設を


原発事故に関する東電から地元の商工会議所への営業損害賠償は平成26(2014)年1月までは円滑だったものの、その以降は支払いが止まっており、不信感を持つ事業者も多い。そういうことも踏まえた制度設計を。


処分方法は国が責任を持って決定を。



Q:これまでのご経験を踏まえて、どのような風評払拭の取り組みが効果的か。


A:今も風評被害あり。国から「安全になっている」と聞き、「安心して食べて」と同じことを皆にアピールし、常々働きかけている。日本商工会議所は、厳しい状況をできるだけ緩和する努力として、年に1回は福島で会議をする。また福島の産品を買うことを続けている。もう一つ、特に海外市場は重要なので、毎年、働きかけている。

しかしながら今なお風評が残っている。




千葉県(副知事)


千葉県でも事故直後に農林水産物への風評被害があった。潮干狩りの来客減少も。

市場価格はほぼ回復しているが、一部に規制が残っている。水産物には、いまだ風評被害。いったん失った販路を取り返すのは困難。

諸外国の輸入規制。台湾については千葉県は交流が深く本件独自で働きかけてきたが解除に至っていない。


特に水産関係者から、県に対して、「風評被害の再燃は確実で事故直後の悪夢のような状況に引き戻されるのでは」という強い不安の声。


水揚げ量全国一の銚子港があり関連産業も盛んな銚子市からも県へ要望書。


千葉県議会でも拙速に処理方針を決定しないこと、および徹底した風評被害対策を求める意見書を可決し国に提出済み。


水産関係者の理解と納得を得ることが課題。風評被害を再燃させないこと。

昨年の房総半島台風被害にコロナによる農林水産物の価格低迷、そこに万が一、アルプス処理水放出による風評被害が重なるとトリプルパンチ。新鮮な海の幸を大きな目玉とする千葉県の観光業にも影響を与える。


海には県境がなく銚子は東日本太平洋海域の重要な拠点。買い控えなど水産物への影響を懸念。ぜひ現地に赴いて生産者や流通加工業者の声を直接お聞きいただきたい。

一般の消費者にも国からトリチウムの正しい情報を。メディアや流通関係者も協力を。



Q:どのような企業職の方々が影響を受けるか。


A:特に不安の声が上がっているのは水産関係者。銚子から勝浦から内房まで。

特に流通加工の基地が発達している銚子港。千葉の観光の目玉が海産物。



宮城県(副知事)

※オンライン参加


食材王国・宮城」農林水産業・観光業への被害。


津波被害から10年かけて復旧復興。その中で放射性物質への対応に多大な労力を割かなければならなかった。


平成26(2014)年9月以降、基準値を超える水産物はないが買い控えへの対応を余儀なくされている。

スクリーニング検査は、平成24(2012)年から令和元(2019)年までの8年間で12万9000検体を超えている。また強力に国内外への情報発信をし続けている。一方で、世界貿易機関(WTO)での敗訴で韓国の輸入規制が長期化する懸念あり。消費者庁アンケート調査で宮城県を含む被災地を中心とした東北の食品購入をためらう人は6.4%存在する。風評はいまだ払拭されていない。


観光業は、宮城県への客数は2019年に震災前を超える過去最高を更新したが、インバウンドなど全国には出遅れている。また風評の根強い韓国や香港からの観光客は震災前の水準に回復していない。コロナの影響もあり長期間にわたって影響。


アルプス処理水について。これまでの経緯から政府や東電に対する不信感に加え、処理水の形成過程に伴う不安感により、処理にあたり風評被害の発生が想定される。


昨今のSNSによる瞬時の情報拡散を考えると風評被害に対する不安は誰もが持つものと考えられ、解決は容易ではない。


処理水の海洋放出で追い打ちをかけないよう、宮城県議会では今年3月、自然界放出を行わないよう求める意見書を全会一致で決定した。

同6月には漁業者の9年間の努力が水の泡に帰すとして、県漁協から県へ、海洋放出断固阻止の要望書が提出された。東電がトリチウム以外の核種の存在をわかりにくい形で公表していたことが、不信感や不安感を持たれる状況を招いた。


県の意見。新たな風評被害拡大が想定される。不信感や不安感を持たれていることから、国民の理解を得られるよう丁寧かつ慎重に。特に流通小売業者に正確な情報を丁寧に継続的に粘り強く発信していくことが大切。風評は国内外を問わず広い地域で発生する。効果が高い対策を。風評被害が発生した場合には誠意を持って対策に応じていただきたい。


今回の伺う会やパブコメも十分に考慮を

コロナで経済の再生も不透明感を増している。地域経済にさらなる悪影響を及ぼすことが懸念される。決定の公表時期についても十分に考慮を


★筆者の感想(2020/10/29記):この赤字にしたあたりの訴えが功を奏したのか、国は10月中とも言われた決定公表を先延ばしにした。



茨城県(知事) 

※オンライン参加


原発事故の影響はまだ解消されていない。シイタケや山菜、淡水魚の国の出荷規制が残っている。一部の国では輸入規制も続き、本県が輸出に価値を見出そうとする中で手かせ足かせになっている。


福島県と接しており漁業ではお互いの海域に入るが事故後は全面的に禁止され、今も北部では不自由な操業が続いている。


魚介類については平成23(2011)年4月から185魚種、1万8249検体のモニタリング検査を行ってきた。


国が基準値を100ベクレルとした後も自主的に50ベクレルを超えるものの出荷自粛を決めるなど、本県の農林水産物への信頼性確保に努めてきた。実に5年9ヶ月間のさまざまな制限を経て、ようやく平成29(2017)年3月に規制対象魚種がなくなった。それでも関西地方などから敬遠されることは続いている。漁業者が店頭に立つなど販売促進とリスクコミュニケーションに努めた結果、現在はようやく落ち着いた状況になった。その矢先に放出されることへの漁業者の強い反対は当然ではないかと思う。


意見

① 処理方法の決定にあたり納得できる説明を


海洋放出でも居住地から遠く離れた無人島などで放出する方法もあるのでは。それを検討したのかどうか。まだ皆さんが納得するには十分な説明がない。さまざまな可能性を探ったのであれば、その内容が明確に分かるようにしていただければ。


小委員会の報告を既定路線とせず、地域社会や環境により影響の出ない方法が本当にないのか、検討結果を含めて説明を。


②どのような風評対策を行うのか詳細を示して


これまでの「伺う会」でも国が行う風評被害対策の具体的な内容が見えてこない。トリチウムに関する不安を取り除くような分かりやすい説明も不十分。


風評の払拭は非常に大きなエネルギーと時間を要するもの。処理水の処分は計画的に行うものなので、国がしっかりとした計画を立てて対応を。


茨城県が、後継者が戻ってくるような利益率の高い一次産業を創出しようとしている矢先。市場を広げようとしている今、県産品を受け入れ始めた諸外国がもとに戻ってしまう心配は絶対にないのか。海外との関係も重視していただければ。輸出拡大に向けて県がこれまで投資してきた費用が無駄になることがないよう、しっかりとした対応を。


風評被害対策を決める際には関係者の意見を十分に尊重し反映することを約束して。国民の理解が不十分なまま処分方法の決定に向けた議論がされていることを、本県の漁業関係者は非常に心配している。絶対反対という立場を取っている。


国や東電が責任を持って国民の理解を醸成し、原発事故の被災者に将来にわたって苦痛を与え、あるいは忍耐を求め続けるような措置とならないよう、適切なご判断を。



第7回

2020/10/08

動画視聴メモ


※都内開催の対面。国側の参加者がかなり増えた印象。経済産業省、復興庁(副大臣)、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省(副大臣)


※経済産業副大臣兼原子力災害現地対策本部長が、前回までの松本氏(前任)から、江島潔氏(現職)に代わった。



福島県水産加工業連合会(小野代表)


福島県水産加工業連合会は仲買人の集まり。産地市場から魚を買って中央市場に出している。9年間、風評の最前線にいる。一番申し上げたいのは、我々は自分で値段を決められない。セリや入札で魚の値段が決まるということ。


小委員会の報告書や東電の検討素案に納得していない。海洋放出には断固反対。理屈では分かる部分もある。廃炉を早くしてくれ、という思いもある。ジレンマの中でやってきた。


では、なぜ反対するか。この10年近く、地震津波で廃業していった者、風評で廃業していった者、東電の賠償が打ち切られて廃業していった者、中には死に至った者もいる。とかく漁業者に目がいって我々の立場は理解していただけない。福島県漁連の野崎会長は常々「漁業者(船)と魚屋は車の両輪だ」とおっしゃっているが、全くその通り。


試験操業を終えて来年4月に本格操業に向ける今の時期に処理水を放出する云々というだけでも、我々はまた風評を蒸し返されるのかという不安な日々を送っている。


福島県漁業は大別して2種類ある。試験操業している沿岸漁業と、サバ・イワシ・カツオのまき網やサンマなど回遊性の魚を獲る漁業。沿岸は、まだ2割程度。回遊性のは震災当時から本格操業が始まっているが、それもままならない。我々が買い負けして、船が入れない。


風評と簡単に言うが、当初は安心・安全・危ないということだったが、もう福島の魚をはずしても流通するような形態になってきているのも現状だ。その中で我々はいかに商売をしていくかという努力を9年間してきた。20%しか上がらない魚で商売はできない。そこで組合員は隣県に魚を買いに行っている。その結果、隣県の業者と軋轢も。回遊性の魚だったら三陸や北海道や日本海から運んだり各自努力している。ただ唯一の救いは冷凍業者。加工原料は以外と風評にさらされないで出回っている。あとは輸出も一部の国をのぞいて順調。それで下支えをしている状況だ。ここで処理水を海洋に放出すれば(輸出のことも考えれば)、福島県の問題ではないのではないか。今までは「風評=福島」というレッテルを貼られてきたが、隣県、はたまた日本全国に及ばないかと懸念される。


この処理水を流す、意見を聴いたのが世間に出てくれば風評が再来しないかと、おっかなびっくりしながらやっている。ただ、これは、どうにかしなきゃならないことも分かっている。廃炉も早くしてほしい。ジレンマの中にいる。


最後に、当たり前の商売をさせてください。当たり前の経済活動をさせてください。そういう環境づくりを一日でも早くお願いしたいというのが正直なところ。


質疑応答

Q:(横山副大臣)海洋放出には断固反対とのことだが、どのような放出方法でも? 福島の魚だけではなく隣県に魚を買いに行く、こうした場合でも風評が?


A:まず、どのような状態と言われても、総量規制など、いろいろあるにしても、流すと決まれば、もう風評は目に見えているので断固反対。あと、隣県から買ってきても風評があるかという質問だが、一例を言えば、私はサンマを仕入れて小名浜名産のみりん干しを作っている業者だが、北海道の原料を買ってきて福島でさばいているものもある。その中でやっぱり、今は表示で「原料:北海道、加工地:福島」というだけで風評(被害)はある。9年も経てば多少は違ってくるということもあり私達もいろいろ努力してなるべく風評の強くないところに出してやっているのが現状。加工品でそうだから、生は余計に酷い。端的に申せば。茨城県で買っても我々は福島県だから、そういう風評になる。昨今のコロナ禍で消費が低迷すれば、真っ先に切られるのは福島県。以上です。




全国漁業協同組合連合会(岸会長)


全国の漁業者を代表して、我々沿岸漁業者の立場から。これは福島県のみならず、全国の漁業者、水産物の消費者である全国民、インバウンドの外国人消費者、輸入してくださる諸外国の市場にも影響を与える極めて大きな問題。6月23日の総会で海洋放出に断固反対する特別決議を満場一致で決議した。これまで地下水バイパスやサブドレンなどの運用の必要性を理解して苦渋の決断で協力してきた。一方、アルプス処理水については原子炉建屋に入り炉心に触れた水を処理し保管しているものであり、運用による処理水とは明らかに異なるものと考えている。また運用の過程で「汚染水の海への安易な放出は行わない」とする方針の遵守を強く求めてきた。その結果、国および東電からは、この方針を継続、堅守するという回答をいただいている。


事故発生からほぼ10年が過ぎ、その間、漁業者は震災の直接的被害のみならず、放射能汚染の問題に苦しんできた。福島県沿岸では現在も操業日数や漁獲規模を限定した試験操業を行っており、本格操業の再開に向けて一歩一歩地道な努力、漁業者の血のにじむような努力が今日まで続いている。一方、諸外国に目を転じれば、近隣諸国をはじめ、いまだ多くの国が我が国の漁獲物に対する輸入禁止あるいは規制を解除していない。多くの業者が売り先を失った状況が今なお続いている。


12月には漁業者が新しい展望を開くための改正漁業法が施行される。私どもは新たな漁業の資源管理と数量管理をしっかりやりながら、資源そのものを管理しながら実践していくことで、漁業の成長産業化を進め、国民への食料供給の役割を発揮すべくJF(全漁連)グループが一丸となって取り組んでいく、今そういう大事な時期でもある。


さらにはコロナ禍で全国の業者や漁協は国民の皆さんに安定的に安全な水産食料を提供すべく日夜努力を重ねている。アルプス処理水の取り扱いについては我が国全体の喫緊の重要課題であることは私どもも認識しているが、このような中で海洋放出が行われることになれば、汚染水による風評被害の発生は必至であり、極めて甚大なものとなることが憂慮される。今までの漁業者の努力を水泡に帰することはもちろん、改革に取り組もうとしている漁業者を失望または挫折させると共に、我が国漁業の将来にとって壊滅的な影響を与えかねない。さらには改善されつつある諸外国の我が国水産物の輸入規制が再び強化される懸念もある。このような観点から、国民の理解を得られないアルプス処理水の海洋放出については、我が国漁業者の総意として、また、全国の漁業者を代表し、絶対反対と申し上げておく。これまで以上に幅広い叡智を結集して、政府をあげて議論を深めていただいて、我々の意見を十分に踏まえ、慎重にご判断いただきたい。



質疑応答

Q1:(江島副大臣)私もかつて水産部会長を務めさせていただき、全漁連のこの10年間のさまざまな風評対策のお取り組みも拝見している。特に「Fish-1グランプリ」でも復興地魚PRブースを設けられていた。感謝を申し上げる。取り組みをされている中で、風評被害の払拭で、今後どういうところがポイントになってくるのかご示唆を。


A:今回の放出の問題での風評被害(対策)は、海洋放出をしない。これに尽きる。福島の今までの事故の中で、いろいろな風評被害があり、ずいぶん漁業者も苦しんできた。しっかりと国のほうで責任を持って、一つの外国の事例をとっても、「科学的に大丈夫ですよ」というようなことを伝えていただく、情報提供していただく。国民にも、国の責任の中で、しっかりと安心できるような情報提供。それが第一。我々はもとより風評被害の払拭について、これまでも地元の皆さんがた、全国の業者も一つになって努力してきた。これからも、その努力は厭わない。新たな風評被害を起こさない、そのことを是非お願いしたい。


(江島氏)ありがとうございました。政府としても風評被害というものは、これからも、最大限にしっかりと科学的な説明、あるいは周辺諸外国への説明等ども、本当に手抜かりのないようにやっていきたい。




Q2:(横山副大臣)今までの廃炉に向けたさまざまな取り組みに対して、現地も含めてご理解ご協力いただいていることに感謝を申し上げたい。風評に関して、私たちも諸外国を含めて漁獲物の規制撤廃について努力してきた。規制を解除する動きもたくさん出てきており、EUも大きく改善していただいた。その中で新たな風評を起こさないということを強く会長からおっしゃられたが、現状では風評が徐々に収まってきているという認識か、改めてお聞きしたい。


A:国のご努力、また業者の地道な努力の中で、福島第一原発の事故に関わる風評被害については、かなり収束の方向に向かっているという認識は持っている。しかしながら、まだまだ、その影響は福島のみならず、私も島根県の原子力発電所の立地する県にいるわけだが、全国にそういうものが、まだまだ残っているというのが現状である。これからも引き続き、そういう風評がなくなるように、国のほうもあげて、ご努力いただきたいと申し上げている。もとより業者も努力していく。



★筆者の感想:アルプス処理水は、いわば迷惑施設のようなもので、多くの人が「いずれ処理しなくては」「海に出すしかないのかもしれない」と思っていたとしても、誰もが「自分の隣にだけは」招きたがらないもの。そう思えてきた。もし科学的に安全だと説明をし尽くして、安全性を第三者が保証する透明性ある管理システムも構築して、その上で海洋放出を完璧に進めても、結局は「なんとなく気持ちが悪い」という人間の感情(風評被害)の発生は止められないのではないか。必要だと分かっていても、悪い煙が発生していないと分かっていても、焼き場の目の前には暮らしたくないと考える人が多いから地価が下がるとか、そういう問題と近いと思う。きちんと処理して管理して流せば科学的には安心と信じている人は、その理屈でいけば、福一の電気を利用していた消費地の責任として「東京湾に流そう」と合意しても良いはずだ。しかし、そうはならない。政府も、そうは言わない。そのことだけ見ても、科学だけで割り切れる問題でないことは明らかだ。東京湾には流せない——その心は、すでに発生してしまった事故サイトの他に、追加的に「なんとなく心配」な場所を増やしたくない、ということではないだろうか。原発事故によって発生したものを、すべて事故サイトで処理したい、ある限られた範囲内に閉じ込めておきたい、という思いがあるのなら、最初から、その前提で事故処理用の敷地と海を確保して、100年なら100年、完全廃炉までの間、しっかり隔離したら良かったのではないか(この仮定と現状とを比べて、どちらが残酷なのだろうか。そこに住んでいた人でないと判断できない)。国土が狭いから、という事情があるにせよ、十分な敷地を確保せずに、一方では帰還を前提に除染を続けたり、復興を目指す漁業者たちに10年もの苦労を強いたりしながら、一方では汚染水も処理水も、それによって生じる風評被害も、限定されたエリアに押し付けるというのは、かなり非道ではないだろうか。とはいえ今から振り出しに戻ることはできないので、上記の仮定は現実的ではない。今からできることは、一部の人たちばかりに過剰な負担を押し付けない進め方を検討するか、あるいは、一部のエリアに限定することを決めて、きちんと謝罪して、許可を得た上で、約10年の努力が報われる方法や必ず生じる被害を極力カバーする保障を検討するか。その2択なのかもしれない(今はもっぱら明確な謝罪がないまま後者の方向で進んでいる印象)。第7回のご意見を聴いて、その後に政府がいったん海洋放出決定を踏みとどまったのは良かったと思う。このまま進めるのは強引すぎるから。きっと今も、関係者にとっての第一選択は海洋放出なのだろうけれど、いち市民としての希望は、ここで改めて、海洋放出という前提を今一度、頭から捨てて、「海に全く流せないとしたら」という条件で、さまざまなシミュレーションを本気で示してほしい。そして、いろいろな代案を出している人たちと正面から向き合って(対談を企画するなど)、国民が冷静かつ客観的に比較検討、再考できるような場を設けてほしい。小委員会の結論通り、多くの国民が海洋放出に納得するかもしれないし、意外な第3の道が見えてくるかもしれない。いずれにしても今のような、海洋放出大賛成!vs 大反対!と世論が二分割されている状態からは脱せるように思う。


 

漁業者たちは、なぜ反対するのか?

  • 福島県漁連は、東京電力の度重なる汚染水漏れや未報告に対して要望書で改善を求めてきた。失望する事象が起こるたびに信頼関係の修復に努めてきた経緯がある。

  • 地下水減少や汚染水総量削減のために、これまでもサブドレインからの放出などを容認し廃炉に協力してきた。これ以上の1県漁協の負担は不平等ではないか。


福島県内の漁港が全て整い、ようやく試験操業も2020年2月に全魚種と海域に広がり、これからやっと本格復興というところ。反対の声が上がるのは当然。


かといって、漁業者の反対意見ばかりを大きく取り上げ、結果的に漁業者に責任を押し付けるような報道が目立つのは、いかがなものか。そもそも処理方法は「海洋放出」一択ではない。福島の漁業者と東電のこれまでの経緯は広く知られるべきだし、漁業者の長引く苦悩は十分に勘案しなければならないが、「海洋放出を急ぐ人」VS「反対する漁業者たち」という対立構造を描くべきではない。



海洋放出以外の選択肢は? 海洋放出する場合の場所は? 決定は政府の責任だとしても、日本社会全体で納得感を高める必要があり、新聞やテレビが果たす役割は大きい。 例)朝日新聞:読者の意見を募集中→ 声・「汚染水どうする」投稿募集します


2014.3.9 (公財)農学会・日本農学アカデミー 公開シンポジウム「放射能物質の除染・汚染水漏洩の現状を問う!」で、(独)水産総合研究センターの森田貴己(もりた たかみ)氏が、「汚染水漏洩の現状と水産物の安全性」と題して講演した。トリチウムではなく、セシウムに関する話。


2013年8月の時点で、福島第一原発の「港湾内」では、多くの魚種から放射性物質が検出されていた(参照:東京電力の資料)。港湾外には漏れていないと言ってきた東電が、その夏に「事故後継続して放射性セシウム等を漏洩し続けいていた」と報告して騒ぎになった。実際は、ここで言う「漏洩」の総量(管理しているはずが漏れていた放射性セシウムの総量)は「2011年の4月に10日間あまりで一気に海に出た量の1/100程度」であり、しかも漏洩していたとはいえ「試験操業海域での影響は全く見られていない」状況だったが、漁業者たちは、消費者の理解が得られないとして、いわき地区の試験操業を延期し、相馬地区の試験操業を中断した。森田氏は、「事故直後の非常に汚染が酷かった状況と現在の汚染が急速に軽減した状況との差が著しく大きいため、消費者にとっては、現状を容易に受け入れ難いのではないか」と推察した。


つまり、いくら東京電力や有識者が数値的に問題ないと言おうが、消費者の理解が得られない可能性が高ければ、漁業者は操業を自粛せざるを得ない立場だということ。この場合、風評被害(あるいは実害)の発生源は、汚染水の管理体制に対する不信を招いた東電である。

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