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トリチウムの生物への影響

更新日:2021年4月12日


◆影響はないという主張


核融合施設から大量のトリチウムが放出されるため、かなり生物影響も研究されている。


参照:安井至氏HP「市民のための環境学ガイド

2013.8.10の記事:トリチウム流出の影響

「影響はある」という立場(当時)の齋藤眞弘・京都大学名誉教授の考察に対して、

反論を述べている。


→③と④の反論の結論付けが、やや強引なような……。皆さんはどう思いますか?

 

放射性物質に詳しい河野益近氏(元京大・文部技官)は、専門外としつつ、下記のように述べ、一つの希望を示している(とはいえ「お金だけの問題で強硬しようとしている」海洋放出には反対とのこと)。


2019年11月23日 河野益近(元京大・文部技官)

化学的には水素と同じなので細胞を構成している元素の一つとして取り込まれる可能性はあるが、生体が3倍も重さの違うものを簡単に取り込むのだろうか。生物は特殊な場合(昆布がウランを多く取り込んでいることは有名)を除いて、特に陸上の生物にはほとんどウランやトリウムが含まれていない。何か防御機構があるのでは。
 

安全を主張する参考文献付きの記事も。


2020年3月10日 河田 東海夫 元原子力発電環境整備機構(NUMO)理事、元核燃料サイクル開発機構(JNC)理事


なお、西尾氏が主張するトリチウム内部被ばく危険論には、2018年11月30日開催の処理水取り扱いに関する小委員会における茨城大学の田内広教授の説明資料からも、放射線生物学の視点から明らかな誤解や誤りがあることがわかる※)。資料3-1 田内委員のプレゼン資料

 


◆影響はあるという主張


内部被ばくの懸念:有機化したトリチウム(OBT:organically bound tritium)が、DNAに入る可能性がある。低線量とはいえ被ばくするため、影響はゼロではない。生物に備わった修復能力頼みとなる。


参考文献:馬田 敏幸.トリチウムの生体影響評価. J UOEH(産業医科大学雑誌)39(1): 25-33(2017)


実験動物やヒトについての情報発信はあっても、多種多様な生き物、海洋生態系への影響に関する情報が不足。


これまで、事故原発から海洋へ、セシウムやストロンチウムをはじめ、さまざまな核種が流出している。半減期が非常に長い放射性物質もある。事故直後の混乱もあり、正確な計測や報告がなされていない可能性も大きい。処理水の海洋放出に伴うトリチウムの影響は、事故で汚染された海への追加的なものになるため、無事故原発からの放出と同等に比較はできない。→非常に短命な生き物もいるので、生物への影響は種による寿命の違いが遺伝の可能性なども考慮する必要あり。



トリチウムは生物濃縮するのか? これにも賛否両論あり。



トリチウムによる人体影響の確かな証拠は? 白血病の報告。その科学論文について賛否両論あり(完全否定が無理ならば、やはり安心できない人がいても仕方がない)。



人体への影響を懸念する声

市民のためのがん治療の会 顧問 西尾 正道氏「トリチウムの健康被害について

参考:西尾氏の主張に対する反論→上述のGEPRの記事



2020.4.1 海の生き物を守る会の隔週配信のメールマガジン「うみひるも」で、同会代表の向井宏氏によるエッセイ 海の放射能汚染「トリチウム水の海洋放出」で考える の連載が始まった。バックナンバーは順次こちらに掲載。

2020.8.22追記 向井代表の健康問題のため連載は中止、同媒体も休刊となりました。

同連載(2020年6月1日発行「うみひるも」263号)より抜粋

汚染水に含まれているのは放射性物質だけではなく、機材の腐食防止のために、大量の化学物質が使われています。それらは人体にも有害であり、海洋放出されると様々な被害・影響が考えられるが、東電も政府もまったくこの問題を無視しています。腐食防止のために汚染水に加えられているのは、ホウ酸とヒドラジンです。ホウ酸は核燃料の臨界を防止するために2011年だけでも105トンが投入されました。ヒドラジンは金属の腐食を防ぐ目的で使われ、73トンが投入されました。これらは人体にも有害で、ホウ酸は人間が吸い込むと吐き気や下痢が起き、ヒドラジンは皮膚に触れただけでも激しくただれ、体内に取り込むと中枢神経が冒され、肝臓、腎臓の機能障害を起こします。さらに長期にわたると癌の発生に繋がるとしています。どちらも水質汚濁防止法によって排出には規制が掛けられています。しかし、東電は化学物質についてはまったく浄化を検討していないと言います。ヒドラジンは、毒性が強く、世界の多くの国では使用を禁止している物質なのです。 参考論文:大沼淳一(2020)「環境汚染を測る(その14 最終回)東電は汚染水をながしてはいけない」月刊むすぶ, 592:16-21
 

科学は揺らぐ。

気候変動の影響もあり、海水循環の様子が想定と異なる可能性も。放射性物質が特定のエリアに集中したり、想定外の濃度になって生物に影響を与えたりしないだろうか?


事例:


なお、セシウムについては、ある程度、海洋生物への影響に関して研究がなされている。

以下は一例。

2012年 水産庁の森田貴己氏の資料「水産物への放射性物質の影響


とはいえ実験環境下ではなく「実際の海洋での拡散」の影響については、研究例はそれほど多くない?


2012年10月 日本海洋学会ホームページ セシウムの生体内移行に関する公開質問



 

水産物の放射性物質の基準値水産物の放射性物質の基準値

2012(平成24)年3月31日までは、暫定基準値 500ベクレル/kg

                       ↓                   現在は、100ベクレル/kg

水産庁HPより抜粋

この基準値は、放射性セシウム以外の放射性物質(ストロンチウム-90、プルトニウム、ルテニウム-106)による線量が、食品全体に含まれる線量の約12%になると仮定し、東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質のうち、食品から受ける放射線量への寄与率が最も高く、測定が容易な放射性セシウムを代表として設定されたもので、仮に毎日食べる食品の半分が100Bq/kgの放射性物質を含んでいて、それを1年間食べ続けた場合であっても、追加的に受ける1年間の線量が0.9mSv以下となるように定められています

低線量被ばくとは?

参照



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